オールオン4 の 手入れ や メンテナンス について
4本のインプラントで人工歯を支える「 オールオン4 」や「ザイゴマインプラント」は従来のインプラントに比べ、優れた点が極めて多い治療法です。特に全ての歯を治療する場合は尚となります。しかし、インプラントと同様にオールオン4も定期的なメンテナンスは必須となります。今回は、 オールオン4 の 手入れ や メンテナンス について紹介していきます。
オールオン4 は手術後、その日のうちに12本分の人工歯(仮歯) が入ります。すなわち、あなたがオールオン4 の施術を受けたその日から、オールオン4 の手入れが必要となります。もちろん、術後すぐは創傷治癒の期間なので神経質になる必要はありません。傷が痛くない範囲で、人工歯やその周囲をクリーニングします。
オールオン4 の上部構造の種類も重要です。仮歯であれ本歯であれ 手入れ や メンテナンス は必要となります。特に仮歯の場合、本歯より表面が粗造となり、汚れが付きやすいので重要です。ケアが十分でないとインプラントにまで炎症を及ぼす可能性もあります。
また、All-on-4 の上部構造 は形状が特殊です。「12本分の歯と歯肉で構成されたインプラントブリッジ」となっているので、通常のインプラントブリッジや天然歯と形状が異なります。自身でオールオン4 上部構造のお手入れをするために、その形状もしっておかなければなりません。
オールオン4 上部構造の種類を知る
種類 | 本歯(ファイナル) | 仮歯(プロビジョナル) |
人工歯 | ジルコニア | 硬質レジン歯 |
歯肉部 | ジルコニアフレーム | アクリルフレーム |
表面性状 | 滑沢 | やや粗造 |
厚み | 薄い | 厚い |
硬さ | 硬い | 柔らかい |
強度 | ◎ | △ |
修復性 | △ | ◯ |
まずオールオン4 の上部構造は、本歯(ファイナル)と仮歯(プロビジョナル)に大きく分かれます。どちらも、手入れやメンテナンスを怠ると、インプラントと同様にインプラント周囲炎になってしまいます。下顎内側の中央部、ちょうど舌が最初に触れる人工歯肉部は歯石がもっとも付着しやすいです。仮歯の場合、表面が粗造なのでさらに歯石を作りやすいです。ちょうど唾液腺(唾液の出る部位)がそこにあるのです。
上記表を見てみましょう。本歯は硬く、薄く、ツルツルです。それに対し、仮歯は柔らかく、厚く、やや粗造です。どちらも手入れやメンテナンスは必須ですが、素材の性質的に仮歯の方が汚れが付着しやすいです。尚、当院の本歯はフルデジタルで制作されるため、モノリシックジルコニアブリッジの提案が大多数となっています。したがって、上記の表では本歯の歯肉部をジルコニアフレームという表記になっています。アナラグで製作されるものは、チタンフレームの上にハイブリッドセラミックを盛るタイプタイプなどもあります。
オールオン4 上部構造の形状を知る
図1を見てみましょう。上顎がオールオン4 の術後すぐに装着される仮歯(プロビジョナル)で、下顎の前歯が天然歯、奥歯がブリッジとなっています。
上顎と下顎で形状が違うのがわかりますか?違いが顕著なところに緑矢印をいれました。
①:1点目はオールオン4ブリッジと粘膜の境目です。オールオン4は人工の歯と歯肉でできているが故に、天然歯と比べて高さがあります。特に人工歯肉は緩いカーブをつけながら、自身の粘膜と接します。ここまで清掃が必要になります。
②:2点目は歯と歯の間です。天然歯の場合は歯と歯の間に、弧形空隙と呼ばれる楔状の隙間が必ずあります。加齢変化に伴い歯肉がやせると弧形空隙が大きくなり、食渣が詰まりやすくなります。オールオン4の場合、歯と歯肉まで連結されるので、歯と歯の間には食渣は詰まらないので清掃は容易となります。
オールオン4 ブリッジの 手入れ
必要な道具
システマ44M (ライオン社, 日本)
ヘッドがほどよくコンパクトで毛の硬さがふつうです。
INPLO-US (オーラルケア社, 日本)
ワンタフト(1歯毎)ブラシのヘッドはさらに小さく毛の硬さは柔らかいです。
ProxySoft (プロキシソフト社, 米国)
片方先端に芯があるフロスで隙間に通しやすいです。
歯と歯ぐきの磨き方
まずは歯のブラッシングです。図2の歯ブラシを使用します。歯の部分に関しては、天然歯のように普通に磨いてください。上下オールオン4 の方は天然歯の感覚をあまり覚えていないかもしれませんが、歯の噛み合わせ面、側面を歯1本ずつ磨いてください。次に、歯ぐき部分もそのまま図2の歯ブラシを使用します。歯の下の人工歯肉を磨いていきます。外側だけでなく、内側も磨きましょう。下顎内側の中央部(舌の前)は歯石が付着しやすい部位です。痛みが出ないように優しくしましょう。
ブリッジ周囲と下部の清掃
次は、インプラントブリッジと自身の粘膜付近のクリーニングです。図3のワンタフトブラシを使用します。粘膜は薄く柔らかいため、傷つけないように優しくブラッシングしていきます。ワンタフトブラシは細いため、ひとかきずつ丁寧に磨きましょう。自身の骨や粘膜が痩せている場合、オールオン4ブリッジと粘膜に段差がある場合があります。食後は水ですすいで、清潔な状態を維持しましょう。オプションで図4のスーパーフロスを使用します。これはブリッジ下部と粘膜の間に通して汚れをとります。患者さんの中にはブラッシングを頑張りすぎて痛みが出る方もいます。血が出る場合は無理してする必要はありません。優しくすることが大事です。
衛生士による メンテナンス
オールオン4 PMTC
ご自身で手入れを頑張っていただくことは重要です。しかしながら、鏡を使っても見えないような位置の清掃は限界があり、衛生士によるメンテナンスは必要です。ジルコニアブリッジは汚れは付着しにくいですが、それでも汚れやステインは蓄積しないわけではありません。オールオン4 のPMTC ( Professional Mechanical Teeth Cleaning ) を行っていきます。専門の衛生士により、歯科用の回転器具を用いて、ブラシやラバーカップ、ウォーターピックを用いてクリーニングをしていきます。通常のPMTCと比べて、より深いポジションまでの清掃となります。併せて、アクセスホール(ネジ留めの穴)の蓋が外れているなど、オールオン4 ブリッジに何かある場合の早期発見にもつながります。
費用と期間など
費用については、上下ともオールオン4 の場合でも、片顎どちらかがオールオン4の場合でも、一律6,600円(税込)となっています。片顎が天然歯の場合、そちらには天然歯用の特殊なオーラルケアを施術させていただいています。
期間は毎月が望ましいです。しかしながら、どうしても遠方や離島の患者様も多いため、「6ヶ月に1回」でお願いしています。また、衛生士によるメンテナンスがない場合、インプラントやオールオン4の保証にも影響があります。患者さん皆様が、「メンテナンスが必須」ということを認識する必要があります。
最後までお読みいただきありがとうございました。今回は「オールオン4 の 手入れ や メンテナンス について」をテーマに記事を書きました。歯の深刻な悩みをお持ちの方に向けて記事を書いていますが、疑問は解決しましたでしょうか? 皆様のインプラントに関する不安を少しでも軽減できる情報を提供できればと考えています。
本ブログは「双方向」であることをモットーとしています。本ブログ読者からのインプラント、All-on-4、ザイゴマインプラントに関するフィードバックやご質問に、できる限り筆者が記事を書いたり、個別返答でお悩みにお答えすることができます。
※本ブログはインプラント・ザイゴマインプラント専門のブログとなりますのでご了承ください。
著者紹介
大多和 徳人
おおたわ歯科医院
オールオン4 ザイゴマクリニック
院長 歯学博士
専門分野
重度歯周病 / ザイゴマインプラント
学歴・職歴
- 九州大学歯学部歯学科卒業
- 九州大学大学院顔面口腔外科卒
- 九州大学病院デンタルマキシロフェイシャルセンター勤務
- 大分岡病院顎顔面外科マキシロフェイシャルユニット勤務
- ALLON4 ZYGOMA CLINIC開設
所属学会
- 日本口腔外科学会所属 認定医
- 顎顔面インプラント学会所属
- ICOI(国際インプラント学会)所属 認定医
- All-on-4 ザイゴマインプラント協会 理事
- Study Group of the Edentulous Solutions 理事
- ZAGA CENTERS所属 認定専門医
専門
- オールオンフォーザイゴマインプラント
- 九州大学総長賞受賞
(テーマ: 3Dプリンターによる三次元骨再生) - 博士号取得
(テーマ: カスタムメードチタンメッシュでの骨再生) - 国際特許取得
(主題: All-on-4 のための三次元スキャンボディの開発)
※詳しいご相談はこちらのフォームから承っております。