インプラントの術式の違い| 即時埋入 | 待機埋入 | 即時荷重 | 待機荷重
インプラント治療の術式はどう違うのでしょうか?インプラントの手術のタイミングで術式が異なる 即時埋入 と 待機埋入 。そのインプラントを使い始めるタイミングで術式が異なる 即時加重 と 待機荷重 。
患者さんの骨の状態や口の中の噛み合わせのバランスなど、歯科医師はインプラント治療に臨む場合に色々なことを考慮して、インプラント治療の術式を考えなければなりません。
この記事ではインプラント治療の術式の違いを具体例を示しながら、 即時埋入 | 待機埋入 | 即時荷重 | 待機荷重 について記したいと思います。
即時埋入 : 抜歯後即時インプラント埋入
即時埋入とは、抜歯が必要な歯を抜いてからすぐに骨を形成し、同日に、インプラント埋入をする、所謂、抜歯即時インプラントのことを意味します。別名、スピードインプラントとも呼ばれます。
図1を見てみましょう。歯科医院で「抜歯」しなければならないとなる場合、多くが、「歯根破折」「骨縁下う蝕」「重度歯周病」のような症状を示している場合となります。
骨の状態や部位、患者さんの年齢など、条件によっては、抜歯だけすると骨吸収が進む場合も多々あります。もし患者さんとのコンサルテーションの結果、ブリッジ治療ではなくインプラント治療を前提としている場合は、インプラント埋入部位に骨吸収が起こることは避けたいと歯科医師は考えます。
抜歯即時インプラントを行い、ある程度の「初期固定」と「骨造成」を付与し、「減張切開」にて歯肉を引っ張ってきて、骨膜レベルで創部を閉鎖することができれば骨吸収は抑制されます。しかしながら、部位や条件によっては手術はハイレベルになるだけでなく、患者さんにとっては痛みや腫れ、内出血を伴いやすい処置になります。
待機埋入 : 抜歯後待機インプラント埋入
待機埋入は従来法のインプラント治療になりますが、抜歯後に骨ができてくるのを長期間(3か月~半年以上)待って、インプラント埋入を進めていく術式のことです。
人の歯は抜歯されると、歯槽骨に抜歯窩(歯が取れた骨の空洞)ができ、3か月から半年ほどで歯槽骨は再生されます。若年層の多くはしっかり骨が再生され、歯槽骨にインプラント治療に耐えられるだけの幅を確保できますが、ご高齢の患者さんの場合、半年待ったとしても骨の再生が上手く進まない方もいらっしゃいます。そのようなことが予想される場合は骨の再生を促進させるような処置を行う場合もあります (CGFやソケットプリザベーション)。
例えば、図2(左)のように、抜歯後長期間経過後に、インプラントに対して十分な骨がある場合はいいのですが、図2(右)のようにインプラントに対して一部骨が足りない場合は骨造成治療を行います。赤で示されているのが、骨造成治療によって増やされた骨になります。骨の硬化のため半年ほど待たなくてはなりません。
即時加重 : インプラント埋入後即時加重補綴
即時加重とは、顎骨にインプラントを 35 N・m 以上の高トルクで埋入できた場合に、同日、仮歯を装着して荷重をかける(食事ができる)術式のことです。術後に仮歯で過ごしていただき、歯肉と骨が整った時点で正式な上部構造を作っていきます。別名、アクティブインプラントとも呼ばれます。
インプラント治療は顎骨に埋入されます。顎骨の表面は硬い皮質骨で囲まれ、内部は柔らかい海綿骨で構成されています。通常インプラント治療は海綿骨に適切なトルク(20~30N・m)で埋入されます。これに対し、即時荷重の場合は、硬い皮質骨に高トルク (35N・m以上)で埋入されます。
上顎の場合は梨状口(お鼻の下辺りの部位)付近の顎骨を、下顎の場合はオトガイ部付近の顎骨を用いることで、皮質骨に対してインプラント埋入をすることができるようになります。これにより高トルク(35~75N・m)なインプラント埋入が可能となり、即時加重ができるようになります。部位によってはハイレベルな処置になります。
待機荷重 :インプラント埋入後待機荷重補綴
待機荷重とは、顎骨にインプラントを埋入後、インプラントと骨が化学的に結合するオッセオインテグレーションが完成するの を3か月から半年間 待ってから上部構造を作っていく術式です。
インプラント治療の基本は、1本の欠損歯部位に相当する顎骨に1本のインプラントを垂直に埋入します。顎骨が足りない場合は、骨造成治療 (GBRやサイナスリフト) を併せて行います。
欠損歯が少数歯であったり、前歯でない場合など、機能的や審美的に大きな問題がない場合は従来法である待機荷重を用いたほうがメリットがある場合があります。臼歯部の治癒成績はあまりよくないことで知られています。しかしながら、 機能的や審美的に大きな問題がある場合は、前述した即時加重を用いなければなりません。
即時埋入 と 即時加重 の応用 : All-on-4
All-on-4 はグラグラの状態の歯を抜歯しインプラントを4本即時埋入、もしくは全ての歯がない状態ででインプラントを4本埋入します。すべてを35N・m以上の高トルクで設置後、そのまま当日中にプロビジョナルレストレーション(審美仮歯)で即時加重を行う術式です。
即時埋入と即時加重を応用した全顎治療(フルマウスリコンストラクション)こそが All-on-4 ( オールオンフォー )ということになります。All-on-4 ( オールオン4 )はさらに、傾斜埋入をして高トルクを出します。この時に用いる角度補正アバットメント等の使用するパーツが特殊になるため専門的な手技も必要となります。特に、角度補正アバットメントのプラットフォームの高さを揃えることはかなりの経験値が必要となります。
前歯を抜歯しなければならない時は、機能面だけでなく審美面でも大きな支障が出ます。仕事に影響がある場合もあれば、近しいの方にも要らない心配をかけてしまうこともあります。そのためにも、このような治療は必要な人には必要な治療となります。
機能面と審美性を両立するために、この All-on-4 ( オールオンフォー )は必要な治療です。しかしながら、治療を成功させるためには条件もあります。場合によっては All-on-4 ( オールオン4 ) も断られる場合もあります。そのような場合は以下のリンクを参考にされてください。わたしたち ALLON4 ZYGOMA CLINIC は様々なケースでも対応できます。
インプラント や All-on-4 を 断られた 人でも
インプラント や All-on-4 を 断られた 人でもできる All-on-4 ザイゴマインプラント をご存知ですか? より引用
最後までお読みいただきありがとうございました。今回は「インプラントの術式の違い| 即時埋入 | 待機埋入 | 即時荷重 | 待機荷重」をテーマに記事を書きました。歯の深刻な悩みをお持ちの方に向けて記事を書いていますが、疑問は解決しましたでしょうか? 皆様のインプラントに関する不安を少しでも軽減できる情報を提供できればと考えています。
本ブログは「双方向」であることをモットーとしています。本ブログ読者からのインプラント、All-on-4、ザイゴマインプラントに関するフィードバックやご質問に、できる限り筆者が記事を書いたり、個別返答でお悩みにお答えすることができます。
※本ブログはインプラント・ザイゴマインプラント専門のブログとなりますのでご了承ください。
著者紹介
大多和 徳人
おおたわ歯科医院
オールオン4 ザイゴマクリニック
院長 歯学博士
専門分野
重度歯周病 / ザイゴマインプラント
学歴・職歴
- 九州大学歯学部歯学科卒業
- 九州大学大学院顔面口腔外科卒
- 九州大学病院デンタルマキシロフェイシャルセンター勤務
- 大分岡病院顎顔面外科マキシロフェイシャルユニット勤務
- ALLON4 ZYGOMA CLINIC開設
所属学会
- 日本口腔外科学会所属 認定医
- 顎顔面インプラント学会所属
- ICOI(国際インプラント学会)所属 認定医
- All-on-4 ザイゴマインプラント協会 理事
- Study Group of the Edentulous Solutions 理事
- ZAGA CENTERS所属 認定専門医
専門
- オールオンフォーザイゴマインプラント
- 九州大学総長賞受賞
(テーマ: 3Dプリンターによる三次元骨再生) - 博士号取得
(テーマ: カスタムメードチタンメッシュでの骨再生) - 国際特許取得
(主題: All-on-4 のための三次元スキャンボディの開発)
※詳しいご相談はこちらのフォームから承っております。