インプラント をしたいが 骨がない 場合の 即時加重 と サイナスリフト
インプラント をしたいのに 「骨がない 」 と言われた方へ。 即時加重 と サイナスリフト の応用でうまくいくこともあります。インプラント 治療は必ず「骨が必要」です。なぜならば、インプラント 治療のメカニズムが、インプラントと骨が化学的に結合することに基づいているからです。
インプラント治療のメカニズムは、
インプラント や ALL-ON-4 を 断られた 人でもできる ALL-ON-4 ザイゴマインプラント をご存知ですか? より引用
もしあなたが インプラント 治療を希望しているならば、必ず上顎であれ下顎であれ、デンタルインプラント(直径4mm長径10mm)を覆うだけの十分な厚みと高さの顎骨が必要ということになります。
この記事では、具体例を出しながら 骨がない 場合に用いられる治療である 即時加重 と サイナスリフト ついて記したいと思います。
(悩み)左右の奥歯の入れ歯をやめたい
「入れ歯をやめたい」というお悩みで来られた患者さんの写真です。正面からパッと見た感じではわかりにくいかもしれませんが、これまで右下に3本分の入れ歯、左上に4本分の入れ歯を使用されていました。
それでは図2を見てみましょう。この方のレントゲンの画像です。図1の写真の通り、右下と左上に歯がないのがわかります。左上に注目してください。赤線で囲っていますが、一部分だけ骨が全くないのがわかりますか?このレベルではサイナスリフトなどの骨造成も断られることもあると思います。
図3は左からの側面観とCT画像を示しています。左上奥歯の一部分だけ骨が全くないのがわかると思います。ぺらぺらの上顎骨に覆われた上顎洞(空洞)です。もし部分的なインプラントでの治療を希望するならば、図3右の赤部分で示すようにかなりの骨造成(サイナスリフト)が必要となります。
このような場合だと、術者(歯科医師)としては術式の選択が悩ましくなります。この方は、左上の部位と右下の部位以外の、ほか全ての歯に関しては非常に健康を保っています。したがって、できるだけ健康な歯を残すコンセプトで治療をしていきます。左上の部位と右下の部位だけ治療を完成させなければなりません。
この患者さんの治療計画を立てるにあたって
問題点の列挙
- 左右の奥歯の噛み合わせの喪失
歯科医師が歯の治療をする場合に必ず奥歯の噛み合わせを整えていきます。左右の奥歯の噛み合わせが両方、もしくは片方があることで咬合 ( かみ合わせ )の位置と高さが決まります。現在は、入れ歯を装着することで咬合の位置と高さが決まっていますが、入れ歯がない状態になるとこれが定まらないことになります。 - インプラント埋入後に周囲の顎骨を刺激したくない
インプラント埋入に際し、周囲に十分な量の顎骨が保てるように手術を行います。しかし、顎骨は骨であるため、入れ歯による慢性的な刺激でインプラント周囲の骨が吸収されてしまいます。歯科医師により判断はわかれますが、わたしは埋入されたインプラントの歯肉の上に、インプラントの化学的結合が完成するまでの間でも入れ歯を設置するのを好みません。(尚、入れ歯を設置する歯科医師は刺激が少ないようにくりぬいたり、柔らかい素材を使用したりします) - 上顎臼歯部のインプラント埋入部の骨がなさすぎる
上顎臼歯部にインプラント埋入に際し骨がない場合、サイナスリフトはよく用いられる術式になります。サイナスリフトとインプラント埋入は同時に行う方が色々な点で優位性がありますが、その場合、骨の厚みは最低でも3~4mmあった方が望ましいです。今回のケースでは約1mmくらいしか骨の厚みがないため、同時法をする場合、初期固定を得るための難易度は非常にあがります。 - 従来法だけでいくと、1年くらいかかる
インプラントと骨の化学的結合が完成するのに3か月から半年ほどかかります。それを考慮すると、右下の奥歯が完成して、左上の奥歯を完成させる順番になるため、非常に時間がかかります。インプラント治療を受けられる患者さんの「時間」の価値と、完成するまでは悩みが解決していないことも歯科医師は考慮しなければなりません。
インプラント治療に際し有利だった点
- 右下顎骨は、下顎管(右下唇周囲の知覚神経が走る管)の位置関係を考慮しても十分な高さと幅の骨があった(7⏋の部位だけはインプラント先端部に顎骨くぼみがありインプラントは短めに)。
- 右下顎骨の骨質自体の密度は非常に高く、即時加重に十分耐えられそうな顎骨であった。
- 左右の奥歯の噛み合わせを長期間失っていたにもかかわらず、まだ、奥歯にクリアランス(歯が入るためのスペース)が保たれていたため、ボーンリダクション(クリアランスを設けるための骨の切削)は少なめで済みそうであった。
実際の手術: 即時加重 × サイナスリフト
図4は手術後のレントゲン画像です。まず、右下奥歯に即時加重インプラントを行いました。それぞれ、手前より5⏋ : 50N 6⏋:60N 7⏋:35Nのトルクを出し、十分な初期固定を獲得できました。3本分のプロビジョナルレストレーション(美しい仮歯)を装着し、即時加重を行っていきます。
ここで、右下奥歯に即時加重を行う目的は、問題点1.であがっていた「左右の奥歯の噛み合わせの喪失」を解消することです。手術日より、右に関しては奥歯で噛むことができるようになり、噛み合わせの位置と高さを決定することができるようになります。
手術が始まり、約1時間ほどで右で噛める状態にし、次に左上の奥歯のサイナスリフトです。まず、インプラントが埋入される部位を想定して、上顎洞の前壁にうっすら穴をあけ、シュナイダー膜(上顎洞の膜)を破らないようにします。シュナイダー膜を上方に挙上(リフトアップ)します。その後、あらかじめ想定した部位にインプラントを埋入します。当日で左右とも手術を終えます。
上顎歯槽骨頂(上顎の歯が生えていた部位の骨の先端部)の骨吸収を示す患者さんが多いのですが、この方の場合、上顎歯槽骨頂の厚みは保てていたのでGBR (骨の横に行う骨造成治療)はほぼ不必要でした。
まとめ: 骨がない 時の インプラント
図5は即時加重インプラントの術前、術後当日の写真です。図5左のような状態でも、条件さえ整っていれば、図5右のように手術当日からしっかり噛めるようになります。
今回のケースのように、お口の中全体の治療計画の構想から「即時加重」という手段を用いる場合もあります。今回のケースであれば、手術日当日から右で噛めるようになることで、右を主体とした噛み合わせの位置と高さが決定されます。
このような治療計画を立てれば、左上にサイナスリフトやインプラント埋入をした場合でも、入れ歯を装着することなく、右の奥歯を使用することができるようになります。患者さんにとっても、当日からある程度の咀嚼ができるようになり満足度も向上します。
今回紹介したケースでは、他の歯が健康を保てており、支えとなる顎の骨もしっかり残っていましたが、残念ながら全体的に骨がなかったり、状況が悪いこともあります。その場合は、All-on-4 ( オールオン4 )や ザイゴマインプラント など違う手段を考えなければいけません。当院では、患者さん一人一人で最善の治療選択ができるように心がけています。
インプラント や All-on-4 を 断られた 人でも
インプラント や All-on-4 を 断られた 人でもできる All-on-4 ザイゴマインプラント をご存知ですか? より引用
最後までお読みいただきありがとうございました。今回は「インプラント をしたいが 骨がない 場合の 即時加重 と サイナスリフト」をテーマに記事を書きました。歯の深刻な悩みをお持ちの方に向けて記事を書いていますが、疑問は解決しましたでしょうか? 皆様のインプラントに関する不安を少しでも軽減できる情報を提供できればと考えています。
本ブログは「双方向」であることをモットーとしています。本ブログ読者からのインプラント、All-on-4、ザイゴマインプラントに関するフィードバックやご質問に、できる限り筆者が記事を書いたり、個別返答でお悩みにお答えすることができます。
※本ブログはインプラント・ザイゴマインプラント専門のブログとなりますのでご了承ください。
著者紹介
大多和 徳人
おおたわ歯科医院
オールオン4 ザイゴマクリニック
院長 歯学博士
専門分野
重度歯周病 / ザイゴマインプラント
学歴・職歴
- 九州大学歯学部歯学科卒業
- 九州大学大学院顔面口腔外科卒
- 九州大学病院デンタルマキシロフェイシャルセンター勤務
- 大分岡病院顎顔面外科マキシロフェイシャルユニット勤務
- ALLON4 ZYGOMA CLINIC開設
所属学会
- 日本口腔外科学会所属 認定医
- 顎顔面インプラント学会所属
- ICOI(国際インプラント学会)所属 認定医
- All-on-4 ザイゴマインプラント協会 理事
- Study Group of the Edentulous Solutions 理事
- ZAGA CENTERS所属 認定専門医
専門
- オールオンフォーザイゴマインプラント
- 九州大学総長賞受賞
(テーマ: 3Dプリンターによる三次元骨再生) - 博士号取得
(テーマ: カスタムメードチタンメッシュでの骨再生) - 国際特許取得
(主題: All-on-4 のための三次元スキャンボディの開発)
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